どうしよう。2

 諦めきれなくて。
 それでも、『一度きり』の約束を反故にさせる手段もなくて。
 ナミさんやロビンちゃんのような麗しいレディとの会話も、心を癒してはくれるけれど、身体の欲を慰めてはくれない。



 島に着くと、俺はすぐに街へ向かい、行きずりのレディに声をかけた。
 ナンパはあっさりと成功、彼女の気に入りのカフェでしばしティータイムを楽しむことになった。


 ゾロとは、あの夜からまともに会話も交わしていない。それどころか、目も合わせてはいなかった。
 ゾロのほうはどうか判らない。俺が、一方的に避けているのだ。
 視線が合えば、声を聞けば、触れてしまいたくなる。だから。


 目の前で微笑むレディは、ナミさんやロビンちゃんにも劣らぬ極上の美女。
 なのに俺の頭の中は、こうして彼女と話している間も、あの緑髪の剣士のことばかり。


「ねェ――これから、どうする?」
 彼女がさりげなく、俺の手に白く繊細なその手を重ねる。
 笑みを返そうとして――――俺は、目を瞠った。


 たった今カフェに入って来た、ひとりの男。きょろきょろと何かを探すように店内を見回し、そうして俺に気づく。
 ぎっと睨みつけてきたその男は、すぐに大股でこちらへ近づいてきた。


 天然の迷子が、なぜこんな所へ。酒屋を探して、迷い込んだのだろうか。
 だが、俺を見てる。毅い瞳。俺が惹かれた――――


「一度でいい、ってのは、一度やりゃもうどうでもいいってことか。なるほどな」
「……え、」
「判ってたはずなのに……てめェなんぞに絆されてやった俺が、大バカ野郎だ!」


 ゾロは言いたいだけ言って、くるりと踵を返した。振り返らない見慣れた背中が、一瞬、震えたと思ったのは俺の気のせい?
 あの言葉は、酒屋じゃなく、俺を探していたってことなのか。
 一度きりだと念を押したのは、ゾロのほうだったのに。
 絆されたって――俺は、諦めなくていいの……?


「なァに、今の? あなたの知り合い?」
「――――ごめんね、レディ」
 俺はにっこりと笑って、不思議そうにしている彼女に言った。



「俺のかわいこちゃんのご機嫌とらなきゃだから。この後の予定はキャンセルしていいかな」




 彼女からは渾身のビンタをいただいた。当然だ。


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今更何だって感じの、続きです。
いきなり浮かんできたので、更新もないことだし、と。
続きは、書くかどうか判りません。
toubaikan * サンゾロSSS * 00:03 * - * - * pookmark

どうしよう。

ああ、だってまさかこんなことになるなんて。


一度きりだからと、ゾロに頼み込んだ。
一度きりでいいから、抱かせてくれ、と。
ゾロは最初めちゃくちゃ引いて、次にキレて、最後には諦めたように溜め息をついた。
一度きりだな、確認を取るゾロに、俺は夢を見ているような気持ちで頷いた。


俺は、ひとりのひとを愛し続けられない人間だった。
それに気づくまでに、何人ものレディを傷つけてしまっていた。
恋をする。
そのときは、その相手だけが世界のすべてのように思えた。愛しくてたまらなかった。
なのに、相手を手に入れた途端、そう、身体を繋げた途端に。
身体の熱とともに、心までが急速に冷めていくのだ。どんなに麗しく、素敵なレディが相手であっても、だ。
気づいてからの俺の相手は、商売のオネエサマばかり。
もう、レディを傷つけたくはなかったから。
恋をしても、本気で口説くことはなくなった。
だって一夜限りなんて、そんな恋を女性に押し付けられないではないか。


なのに、それでは我慢できない相手に出会ってしまった。
それが、ゾロだ。


俺はどこかで安堵していた。
男相手ならば、最初から一度きりと言える。
ましてやゾロだ。そう簡単には口説き落とされはしないだろう。
終わった後で俺が冷めてしまったからと言って、向こうだって気にしやしない。
久しぶりに、本気になって口説いた。返ってくる反応が新鮮で、相手にされないのも楽しかった。
とうとう頷いてくれたときには、涙が出そうになった。


ああ、それなのに。
こんなことってあるだろうか。
まさかゾロが――俺の、たったひとりの運命の相手だったなんて。


抱いた後も、いや、抱く前よりもずっと、ゾロのことが愛しくて愛しくてたまらない。
一向に冷めない心。
だって、一度きりなのに。
一度きりだと言ったからこそ、ゾロは頷いてくれたのに。


隣で未だ眠る、俺のファム・ファタール。
なあ、一度限りでなくお前を手に入れるには、どうしたらいい?



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仕事中に浮かんできたので書いてみた。
真面目に仕事してください、桃木さん(苦)
こんな感じの短いネタを、また浮かんだら書くかもです。
判んないけども。
toubaikan * サンゾロSSS * 23:48 * - * - * pookmark
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